乾陽亮設計事務所のデザイン NewsLetter #31

工芸アートパネル「古都の記憶」

伝統工芸で実現する空間演出
古代から現代までの奈良の街並みを重ねる工芸アート

工芸アートパネル「古都の記憶」

工芸アートパネル「古都の記憶」

「古都の記憶」は奈良に新しく建った建物のロビーを飾る工芸アートパネルです。伝統工芸に備わる表現性を活かし、古都・奈良の歴史と風格を象徴する空間演出としました。
奈良は古くから続く風土に日本の原点とも感じられるような、図太く強い魅力がある街です。天平の時代には大陸風の建物が並び、「あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり」と謳われた当時の最先端の都でした。また江戸時代には町衆文化が盛んになり、鹿よけとなる奈良格子が街を飾ります。

天平時代の奈良の街では、屋根は“瓦”で葺かれ、柱は丹朱の鮮やかな“赤”、格子は岩緑青の“淡い翠色”で飾られていました。それらの象徴として、「奈良瓦」と丹朱と緑青を「焼箔」の色で表現しています。それらを江戸時代の街並みを象徴する奈良格子を通して覗き見るように、名栗の材の隙間に配置しました。奈良の天平時代を象徴する素材と色というレイヤーの上に、町衆文化を象徴する名栗の奈良格子のレイヤーを重ね、現代から眺めることで奈良の歴史の蓄積と現在を繋ぐことを目指しています。


突き鑿仕上げの栗材、手焼きの奈良瓦、銀を発色させた焼箔、日本を代表する銘木のケヤキといった伝統素材を使い、それぞれ専門とする複数の伝統工芸の職人に制作していただいている。そして、それらを組み合わせて7枚のパネルとし、奈良の歴史と風格のストーリーを生み出しました。

このようなストーリー性の表現は、伝統工芸の得意とするところであり、個人的にも非常な可能性を感じています。


IMG: 瓦を埋め込んだアートパネル

瓦を埋め込んだアートパネル

天平時代の奈良の街並みを象徴する瓦。奈良の土を使った鈍い光沢を持つ燻(いぶし)仕上げとし、奈良格子を表す名栗の隙間から覗かせている。


IMG: 丹朱を表すアート

丹朱を表すアート

天平時代の奈良では柱などの構造体は丹朱が塗布されていた。
原料となる辰砂には毒性があるため、子供などが触れても安全であるように銀を硫黄で燻して色を付け、古代の赤色の代用としている。


IMG: 岩緑青を表すアート

岩緑青を表すアート

岩緑青も天平時代の奈良の街並みを代表する色である。
当時の奈良の街並みを褒め称える万葉集に収められた「あをによし」から続く小野老の歌にある青丹(あおに)とは岩緑青のこと。


IMG: 複数の伝統工芸の統合

複数の伝統工芸の統合

瓦、箔、箔押し、名栗、木工、そして組み立てなど複数の伝統工芸の職人の技を合わせて制作されている。写真の瓦は奈良の瓦道、栗材は大阪の橘商店、木工は滋賀のつぼ忠など、近畿の様々な職人の手が入っている。それらをストーリーに沿って取りまとめ、1枚1枚手作りで制作している。
※瓦に押された「瓦文」は瓦道の印。


IMG:

古都の記憶 DATA
古都の記憶
寸法:W306 × H920 × D30 mm × 7連
素材・技法:栗突き鑿仕上げ(保護材塗布)、アクリル、焼箔、燻瓦、欅、その他補強

Design: 乾 陽亮(乾陽亮設計事務所)
Photo: 大野 博(大野博写真事務所)

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