



2025年10月10日から2025年10月23日の期間で伝統工芸青山スクエアで開催された「彦根仏壇 伝統的工芸品指定50周年記念展」のコンセプト立案から会場構成、説明プレートのデザインまで手がけました。以下に展示会のコンセプトを掲載して、解説の代わりとさせていただきます。「演出性」は、僕が伝統工芸の事業やデザインに関わる場合、ここ数年常に意識してきたキーワードです。
50周年記念展にあたって
彦根仏壇の起源は約350年前の江戸時代中期とされ、武具、武器の製作に携わっていた塗師、指物師、錺金具師などの職人が、彦根藩主である井伊家の強力な庇護のもと、平和産業としての仏壇製造に転向したのが始まりといわれています。現在の彦根仏壇は、七職と呼ばれる高度に専門化した職人がそれぞれの工程を手作業による高い品質で仕上げています。漆の変わり塗や蒔絵、金箔、錺金具をふんだんに取り入れた豪奢な4尺以上の大型仏壇が多く、耐久性にも優れた高級仏壇として全国的に高く評価されてきました。
1906年から産地独自に製品規格を制定して品質の向上と維持に努め、1975年には仏壇業界として初めて国の「伝統的工芸品」の指定を受けています。今年はその指定から50周年の節目の年になります。
特にこの50年は、社会状況や生活スタイルの変化など様々な波に晒されてきました。その中でも産地として守るべき感性と技術は守り、変わるべきところは変え、新しいことにも挑戦し続けてまいりました。その50年の取り組みを感じていただけるように、今回の展示は手前から伝統・革新・予兆の3つのゾーンを設けています。それぞれ雰囲気は違うかも知れませんが、根底に流れる彦根の工芸の粋は感じていただけると期待しております。
工芸の街 彦根の革新性
彦根仏壇の特徴は、仏壇屋がディレクターとなり、七職と呼ばれる木地師・宮殿師・彫刻師・漆塗師・金箔押師・蒔絵師・錺金具師の職人にそれぞれの工芸を発注してひとつの仏壇を作り上げることにあります。つまり、彦根は7つの工芸産地が同居している“工芸の街”であり、時には他産地の工芸を取り入れながら、それらを統合して目的を適える知見を持つ、という稀有な工芸産地です。
彦根の工芸は、甲冑から仏壇へ、また現代の生活に見合う仏壇へのアップデート、家具や空間の創造、それぞれの技能を生かした各種の工芸など、350年にわたって革新を続けてきています。ひとつの職能では全体を変えることが難しいですが、高度に専門化した職人たちと、それらを統合する知見を持つ“工芸の街”であることが、その革新を支えてきたと言えるでしょう。
革新を続ける彦根が守る伝統の工芸、そして今日の工芸、さらに次代の工芸をひらく可能性が展示できていれば幸いです。
予兆 ─ 演出の工芸
伝統工芸が持つ“演出性”は、利用者の表現を適え、生活を豊かにしています。工芸は、地域性や季節性、関連性などのストーリーを体現する有効な手段です。彦根でも、仏壇づくりで培った知見で、空間や玄関、節句、イベントなどを演出する工芸を生み出しています。
彦根の工芸に、新しい展開への予兆を感じています。