逆説的ですが、障子と畳の伝統的な空間の中で成立する今様の仏壇を考えてみようと思いました。伝統の空間の中で今様の生活を築くのはむしろ先鋭でしょう。その生活と空間の中では、量塊感を持ってしまう扉付きの木の箱は重々しい。もし虫籠のように軽やかに結界を作りながら存在する仏壇があるならば、書院にすら見合うように感じました。いわば、仏間がない架空の世界の書院に置くための今様の仏壇です。
「湖望(こぼう)」は、無垢の桧格子でつくる祭壇です。釘を使わずに組んだ桧の四方枠を重ね、その内部に太鼓の胴にも使われるブビンガを2枚挿入して須弥壇とし、背板に高岡の伝統工芸品である鮮やかな緑青銅板を張っています。格子を通して斑らな光が落ちる緑青銅板を湖面として、湖を望む窓に見立てたことから「湖望」と名付けました。
「重ね」は日本文化の特徴のひとつだと僕は考えています。直接的な形態の「重ね」もそうですが、本来と目的とは異なる在り方や概念をそのものの存在に重ねて楽しむ「見立て」も「重ね」のひとつの在り方だと考えています。この多元的な「重ね」という手法を取り入れた、現代の和の在り方を提案できていれば幸いです。
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税別 ¥98,000 ※仏具は別売