錺金具の瓔珞ピアス
錺金具の瓔珞ピアス
錺金具の瓔珞ピアス
錺金具の瓔珞ピアス

錺金具の瓔珞ピアス

date. Sep 2022
project No. EX
category. Object Design Works

3つの紋でストーリーを表す装飾具

垂れ下がる装飾具は古代インドを発祥とし、瓔珞(ようらく)と呼ばれ伝統工芸の世界で今に伝わります。主に仏像の装飾など仏教関係で見られますが、元来は貴人が身に着ける装飾具だったそうです。作られているものは大量に繰り返して繋げられるもので、一般的には宝相華や油煙のような形状で整えられることが多いのですが、ここに日本で発祥した文化性を取り込むことは、僕の知る限りでは、されてこなかったように思います。
日本近代の黎明期に盛んになりつつあった紋章─つまり家紋は、和柄と呼ばれる単色でも表せる意味を与えられた文様へと変遷し、江戸時代の印刷文化で開花した、と見ることができます。図案化された意味を持つ紋が数千、あるいは数万種類以上ともいわれるアーカイブを持つ、というのは日本固有の文化のひとつでしょう。もちろん錺金具で家を表すために家紋を入れることは良くありますが、その意味に注目し、意味を繋ぎ重ねてひとつのストーリーに仕立てた例はほとんど見かけません。
現在に錺金具師にピアスを制作していただく際に考えたことは、古代インドの瓔珞の原型と、日本の文化性を組み合わせて遊んでみる、ということでした。

具体的にいくつか考えてみましたが、好評だった不老長寿と天下の象徴である「三階松」、正月の縁起物「一富士二鷹三茄子」、歳寒の三友「松竹梅」を手で彫金できるよう紋として図案化しました。紋3点でひとつの意味を表す瓔珞としています。単に身を飾るものではなく、1つの意味でもなく、3点で作る景色にある種の奥行きのある重奏感のようなものを持たせられ、その文化性を身につける表現性を獲得していることを期待しています。それが正月や節句など日本の風習を楽しむ際に付けて楽しむことに繋がれば、僕の今回の「遊び」は成功したと言えるのですが。

なお、尾張仏具の錺金具師 野依克彦氏に制作していただいています。1点1点が12mm程度の小さいサイズでありながら、手打ちの鏨の跡が一様で美しく、とても精度の高い品質に仕上げていただきました。

project title
錺金具の瓔珞ピアス
date
Sep 2022
project No.
EX
program
Object Design
design
乾陽亮
manufacturing
野依 克彦(伝統的工芸品「尾張仏具」伝統工芸士)
photo
梅田 彩華
client
Private Work